2017-09-15から1日間の記事一覧

少年と画家の男

男は嘆いていた。この世界は美しくない。四方八方、コンクリートや鉄の塊だらけ。申し訳程度に添えられた植物たちは人工物。こんな偽物に俺は騙されない。 男は怒っていた。仕事は殆ど機械化され、脳にチップが埋め込まれた我々に学びは不要。今人類は何をな…

木星フレア

「お兄ちゃん、何をみてるの?」 後ろから低い声の女性が話しかけてきた。 「やあキャシー。惑星を観ていたんだ、この時期しか観測できないんだ。ほらあそこ」 兄であるランシターが指す先には、他の恒星たちとならんで光る小さな点があった。 「アレが惑星…

消毒

「はっくしゅんっ」 渡辺次郎のくしゃみにクラス一同が注目する。次郎は鼻をかんだあと、それに気づいて口を開いた。 「な、なんだよ皆、青ざめた顔して」 「先生、今次郎くんが...」 「ええ、見ていたわ...」 そして先生が全ての教室の教卓に備え付けられて…

色んな仕事

天候は良好。気温もそう高くなく、気持ちの良い風が吹き抜けていた。今日は釣り日和だ。釣りの道具とクーラーボックスを両手に山を少し登った所にある川へとやってきた。仕事に追われる毎日を忘れるにはこの喉かな自然の中誰にも会わずに有給休暇を楽しむの…

時計

僕の名前は田仲太郎、小学生だ。 ある日お婆ちゃんからもらった昔の時計を弄くっていたら魔神がでてきた。 「君の願いを叶えてやろう。ただし対価として時間を頂く。」 願いを叶えてくれる。そう聞いて僕は少し迷ってから願いを言った。 「同じクラスの○○ち…

伏線の多い料理店

こんばんわ、“伏線の多い料理店”へようこそ。この店は山道を抜けた山の中腹ほどの位置にあり、さらに営業時間も朝の五時から一時間ほどしかやっておらず、伝説の名店と呼ばれております。味はもちろんのこと、この店の特色ともいえるのがなんといっても“伏線…

多重人格少年

記者と名乗るものが少年に話しかける。 「貴方がこの地区で有名な“多重人格少年”の太郎くんですね?私、記者の渡邉と申します。よろしく」 「はい」 その様子を野次馬たちは遠目でみていた。渡邉は気にも止めずに質問を続ける。 「現在、いくつの人格を持っ…